近畿大学水産研究所


 住所 和歌山県東牟婁郡串本町大島1790−4

 Tel 0735−65−0501    代表 澤田 雅信教授


 特色 世界初のホンマグロの完全養殖に成功

 串本町大島は、水産業が地場産業である。しかし、海の汚れや乱獲がたたり、漁獲高は減少の一途を辿った。そこで、ハマチ、タイ、シマアジなどの養殖を県の水産課が進め、転換を図った。しかし、瀬戸内海地方の養殖とは規模が違うため、値崩れが激しく利益があがったとは言い難い。そこから、大量に入荷があれば、買いたたかれるのである。したがって、廃業する業者が続出したが、だれもがホンマグロの養殖に転換しなかった。

 それは、リスクが大きくて、失敗する可能性が高いからである。しかし、近畿大学水産学部の熊井教授を中心としたスタッフは、困難なホンマグロの完全養殖に取り組み、成功した。世界初の快挙である。完全養殖とは、卵の採卵から孵化、成魚に育てて採卵というサイクルを経る養殖である。その難しさは、採卵した卵の10000分の1しか成長しないことからも想像できよう。

 ホンマグロの養殖イケスに行ってみると、体長が6メートルちかい大魚が、高速で泳いでいる。餌を求めて、海面に浮きあがってくるマグロは、群青色で美しかった。

 大島では、3年目から出荷して、1キロ10000円ぐらいである。天然物は1キロ50000円はするから、随分安い。味は、天然物と遜色はなく、成長産業として期待されている。



 
人物訪問記 養殖業界の救世主 澤田 雅信教授

 澤田先生のお話を伺うと、いかにも学者らしい謙虚さを感じる。テレビでエコノミストと称する山師的学者の言動に、あきれている自分にとって、着実に課題を解決していく先生の態度に尊敬の念を抱く。

 「マグロ養殖も軌道に乗ったようですが、課題は何でしょうか」

 「コスト削減です。餌は今は冷凍サバを使っていますが、大島では水温が低いので3年待たなければ、出荷できません。粉末の飼料を開発しなければ、利益はあがらず成長が伸びません」

 「ほかに課題はないですか」

 「あります。海の汚れです。アメリカでは、マグロの肉に水銀が多いので、妊婦には禁止されています。日本の沿岸の汚染はひどいので、環境対策をしなければ成長は望めません」

 「マグロ養殖は、エコロジーとの関係が深いのですね」

 「その通りです。エコロジーとエコノミーが一体となっているのが、マグロ養殖産業です。これからは、中国がマグロの大消費国になります。どんどん輸出できる態勢を整えたいですね」

 海外輸出型の産業が日本の特徴であるが、マグロもそうだとは知らなかった。これからは、BRICSが輸出の大国になる。未来は、明るいと感じた。





マグロの餌やり風景